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自主財源を確保し自走できる組織を目指す、渋谷区観光協会。

渋谷には渋谷区観光協会がある。

「観光協会」という言葉が、地方の観光活性化のために奮闘する団体を想起させるイメージが強いためか、

「え?渋谷にも観光協会ってあるの?」

と言うセリフを聞くことがたまにある。

日本全国にある多くの観光協会が、「わが町に観光客を呼び込もう」とシティセールスを行っていることは想像に容易いが、何も無い平日でも「今日はお祭りか?」と感じるほど人の多く集まる渋谷だけに、渋谷に観光協会があることに新鮮味を感じるのかもしれない。

そんな渋谷区観光協会が、今年に入ってから存在感を増しつつある。

以前記事でも取り上げた、ラッパーのZeebraが渋谷のナイトアンバサダーに就任したことも渋谷区観光協会が仕掛けたものだ。
http://shibuyajournal.tokyo/nightambassador_zeebra.html/

大都市渋谷ならではの観光協会の取組み事例として、地元民間企業と連携した2つのイベントを紹介する。

本来なら観光協会とは関係のなかったイベント

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「Welcome to OUR SHIBUYAプロジェクト」

7月24日(土)、都内の中高生62人が渋谷を訪れた訪日外国人観光客に対して、英語でのボランティア観光ガイドを行ったイベント。

このイベントの主催は、オンラインでの英会話学習ビジネスを展開している”レアジョブ”。
インターネットテレビ電話で日本人とフィリピン人をつなぎ、自宅で手軽にネイティブイングリッシュスピーカーと会話ができるオンライン英会話教室を提供している会社だ。

イベントのきっかけは、レアジョブから観光協会への問い合わせ、

「学生たちの英会話への興味を高めるために、渋谷のどこかで体験イベントをやりたい、手ごろな会場を教えて欲しい。」

という渋谷の観光とは関係のない自社イベントの相談であった。

普通であれば、渋谷区が運営している有料公共スペースの案内などをする程度の対応になっただろう。

しかし、渋谷区観光協会は違った。

レアジョブに対して、観光要素を加えた新たな企画の提案を行ったのだ。
ただ英会話サービスの体験をするだけでなく、2020年に向けた英語によるボランティア観光ガイド体験を渋谷駅前で行うという企画だ。

観光協会からは、英語と渋谷観光案内のできるスタッフや、訪日外国人向けボランティアガイドとして業務委託をしている団体”ジャパンツアーガイド”をリソースとして提供し、警察や行政への許可なども仲立ちした。

結果としてレアジョブは、語学ボランティアのための予習として、英会話に興味のある中高生たちに対して自宅でのオンライン英会話サービス体験を達成することができた。

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参加した中高生たちにとっては、生きた英語に触れることができると同時に、ボランティアガイドという社会経験もできる貴重な機会となった。

訪日観光客にとっては、ローカルの学生たちと触れ合うというある意味思い出が残せたように思えた。
(※さすがに観光ガイドとしてのレベルが低いのは仕方ない。)

参加学生の中には、

「ボランティアガイドをやる上では、英語力より、渋谷の知識を知らないことの方が問題だと思った。もっと渋谷で遊んで、街のことを知りたくなった」

という声もあがった。
数は少ないが、若い世代の渋谷への興味関心づくりにもつながったといえよう。

観光協会はこの企画の対価として、レアジョブに渋谷区観光協会賛助会員となってもらった。
賛助会費は協会の運営を賄う貴重な自主財源だ。

企業の福利厚生がお祭りに発展

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「みやしたこうえん夏まつり2016」

8月27日(土)、宮下公園で盆踊りや音楽ライブ(とんかつDJアゲ太郎、DJみそしるとMCごはん、bird等)、お祭り屋台が賑わう夏祭りが行われた。

このイベントの主催は、明治通り宮下パーク商店会。
いわゆる街のお祭りだ。

この”みやしたこうえん夏祭り”、実は歴史が浅く昨年に一度実現しただけ。
今年の実施有無は検討中だったという。

結果、特別協賛社が決まり実現に至った。
その協賛社が、株式会社ミクシィ。
人気スマホゲームアプリ「モンスターストライク(モンスト)」や、SNS「mixi」で有名なミクシィだ。

夏祭り協賛のきっかけは、ミクシィから渋谷区観光協会への相談からだった。
(ちなみにミクシィは渋谷に本社を置く企業であり、いわゆる”おつきあい”として渋谷区観光協会の賛助会員に名を連ねていた。)

「従業員とその家族に向けた福利厚生の一環として今まで自社オフィス内で夏祭りを行ってきた。せっかくの夏祭りなので外に出て、渋谷の街の中でお祭りをやりたいのですが。」

これを聞いた観光協会は

「突然、3か月前に街中でお祭りをやりたいと言われても。。」

と最初は戸惑ったそうだ(笑)。

が、この願いが実現できそうな相手として”みやしたこうえん夏祭り”の現場チームを紹介した。

街のお祭りと、企業の家族向け福利厚生お祭りとをお見合いさせたのだ。

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開会には、オープニングには明治通り宮下パーク商店会会長の「小林さん」、渋谷区長「長谷部さん」と株式会社ミクシィ代表取締役社長の「森田さん」と握手。

渋谷の地元お祭りに地元企業が協賛をする、一見よくある形だ。
街のお祭りとミクシィの福利厚生がどのようにつながったのか。

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これが福利厚生の品。

社員や関連会社の従業員とその家族に配られたミクシィチケットは、祭り会場内のどの屋台でも使える無料券。

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一般のお客さんは普通にお金を払ってビールやソーセージを屋台で購入する仕組みのため、誰がミクシィの社員か一般のお客さんかは分からない。
自然な形で融合が果たせている。

ミクシィ社員の方に聞いたところ、多くの社員が家族連れで訪れていたようだ。

一般的な社員旅行や宴会は、会社内の立場や序列の影響が大きいため、どうしても仕事の延長線上になりがちだ。
そんなところに家族を連れてくることが嫌だという人々も多いはず。

ところが、会社近くの街のお祭りであればそこに他人がいる。
このことで社員同士の適度な距離感が保て、家族ぐるみの参加につながったのだと思われる。
道すがら、自分の働いているオフィスやお気に入りのお店に立ち寄るといったコミュニケーションも生まれそうだ。

ミクシィ広報の根岸さんに今回の取り組みや観光協会の印象について聞いてみた。
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「ずっと本社が渋谷なので、いつか渋谷と関わる取り組みがしたいと思っていました。今年やっと実施することができて嬉しいです。イベント本番は、予想よりも多くの社員も遊びに来てくれました。来年は(建て替え工事のため)宮下公園は使えないけれど、こうした地域との関わりは増やしていきたいと思います。」

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なつまつりのクライマックスは盆踊り。

ミクシィ社内では、社員有志による会議室での盆踊り練習会も開かれていたそうだ。
会社で覚えて、家に帰って家族にも教えたりしていたのだろう。
炭坑節や渋谷音頭など、地域住民に混ざって若い方々がたくさん踊りに参加し、会場は大いに盛り上がった。

ミクシィは地域のお祭りに協賛することで福利厚生のお祭りを街中でやる、という本来の目的を達成することができた。

街や商店会にとっては、実施検討中であった地域のお祭りが実現できた。

また、渋谷来訪者は単純に渋谷のお祭りで飲んで食べて踊って、夏の思い出をつくることができた。

渋谷区観光協会としては、賛助会費を払っていただいている会員会社へ付加価値を提供することができた。
こうした活動が、次年度以降の継続した会費獲得につながっていくのだと思われる。

自主財源確保を目指した営業

渋谷区観光協会は、中長期的な計画として渋谷区からの賛助会費に頼る割合を減らし、自主財源の割合を増やすことを目指しているという。
自主財源の割合が増えれば、安定した団体運営につながるだけでなく、スタッフ増員、独自観光企画の実行がやりやすくなるからだ。

そのために、先述事例のように積極的な営業企画や賛助会メリットを高める活動に力を注いでいる。

最後にもうひとつ最新事例を紹介する。
自らの観光協会事務所まで有効活用しようという試み、

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「Coin Space by 渋谷区観光協会」

8月31日、渋谷マークシティ内にある観光案内所”クリエーションスクエアしぶや”の一部が、時間貸しスペースとしてリニュアルオープンした。
訪日外国人やビジネスマン、学生など渋谷に集まるあらゆる人たちの「スキマ時間」のニーズを取り込む狙いだ。

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もともとこのスペースは渋谷区観光協会の事務所兼観光案内所。
以前から余りあるスペースの活用方法として写真展などを催してきてはいたが、どうにも中途半端な役割であった。

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それが、全席電源使用可、Wi-Fi完備、利用時間に応じて課金される多目的スペースに。

受付はコインスペースのスタッフが立つが、従来どおり渋谷区観光案内所としての役割も果たす。新たに有料手荷物預かりサービスも付加されたため、旅の作戦を練る基地としての存在感が増した。

渋谷駅直結という立地は、街なか観光に向けた出発拠点としてありがたい。

店名である”Coin Space”は、渋谷を中心としてビル内空きフロアを時間貸しスペースとして活用する事業を展開するスタートアップ企業”コインスペース株式会社”の商標。

同社代表取締役社長の佐藤さんに狙いを聞いた。
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「渋谷には、空いた時間にでも、仕事や勉強をするなど意識が高い方が多いです。こうした人たちの作業スペースとして、朝活の場所としてなど、様々な利用シーンを想定しています。」

そして、ここ最近渋谷区観光協会の存在感を高めてきた立役者、今年の4月に渋谷区観光協会の代表理事に就任した金山さんは、
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「とにかく殺風景でテンションも上がらない観光案内所の環境を変えたいと思った時に、Coin spaceと出会いました。観光協会の窓口も兼ねることから、訪日外国人も含め、荷物が多い旅行者向けに荷物の預かりを行います。また一般の方にも、仕事や用事の間のスキマ時間に使ってもらうことも想定しています。更に、今はみんなスマホやPC,デジカメを使いますが、渋谷では充電できる場所がほとんどないと聞きます。そんな電源難民の方々にも、立ち寄って充電していただく需要もあると考えています。」

渋谷区観光協会は、貸しスペース業での売上げ利益をCoinSpaceとのレベニューシェアで受け取り、自主財源に充てる。

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観光協会は、日本全国にあり地域の魅力発掘と発信に日々奮闘している。
その街を訪れる観光客にとって、その日を飛びっきり楽しい一日にするための有意義かつ特別な体験の情報はあればあるほど嬉しい。

一方で、観光情報発信に次いで重要なことが、訪れた人々の旅の不快を解消することだろう。
特に急激に増えている訪日ゲストに対しては、電源、Wi-fi、手荷物、言語、安心情報など、この先整備すべき課題は増えていく。

そうした旅の不快解消をするためには財源が必要。
ある程度国や自治体の補助金や助成金で賄うことも必要だが、渋谷区観光協会のように民間企業と共同で課題を解決したり、自主財源を集めることも可能であると感じた。

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渋谷区観光協会の皆さん。この先も賛助会企業との連携や観光客が渋谷の魅力を体験できる面白い企画をどんどん生み出していき「自走できる観光協会」を目指しますと語ってくれた。

この先も彼らの活動に注目だ。

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<取材協力>

渋谷区観光観光協会
http://play-shibuya.com/

レアジョブ
https://www.rarejob.com/

株式会社ミクシィ
https://mixi.co.jp/

株式会社シブヤテレビジョン
http://www.sib.tv/

コインスペース株式会社
http://coinspace.jp/

Coin Space by 渋谷区観光協会
住所:東京都渋谷区道玄坂一丁目12番5号渋谷マークシティ4階 クリエーションスクエアしぶや内
営業時間:午前7時~午後11時
料金:オープン特別キャンペーン価格 100円(税込)/15分
席数:44席
設備:Wi-Fi 全席電源完備 など
その他:飲食物持ち込み自由(ただし周りのお客様に迷惑をかけないもの)

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