渋谷新聞は東京・渋谷の粋な情報を発信するWEBマガジンです。

「子どもたちにつないでいくために」街並みや文化を守る道玄坂町会

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ここどこでしょう?

いい雰囲気の街路灯と、白いビルと、木の枝からちらほら見える広告看板のようなもの。

写真を見てピンと来た方、

おそらく、

あなたは、

渋谷の町会関係者でしょう。

もしくは、よほどの渋谷フリーク。

街路灯の形は、スクランブル交差点周辺でもいろいろと違う。

写真の場所は、道玄坂。

さらに細かく言うと、道玄坂の中でもスクランブル交差点付近から道玄坂上交番付近までのあたり。

渋谷駅前周辺には、実にさまざまなデザインの街路灯がひしめきあっている。

「そのわけは、町会と密接に関わっている」

と語ってくれたのが、道玄坂町会の

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阿部さん。

以前、渋谷新聞の記事で取材させていただいた、粋で大人な、うなぎ屋の楽しみ方。渋谷「花菱」。の店主。

同時に、900年以上続く渋谷のお祭り”例大祭”の連合渡御(とぎょ)実行委員会代表幹事でもある。

この街路灯ができたのは約30年くらい前だという。

「自分たちの商店街だから、自分たちで良いものをつくろう」

と、阿部さんのお父さんやその上の代の人たちなど、まちの人たちが自発的にお金を集めてつくったそうだ。

大正モダンで落ち着いたデザインのこの街路灯は南部鉄器製、オリジナルオーダー製品。

渋谷道玄坂には日本を代表する伝統工芸品があり、我々はその明かりの元を歩いている。

そう意識すると、いつもと違った粋な気分で渋谷を歩けはしないだろうか。

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スクランブル交差点から続くケヤキ並木と街路灯。

南部鉄器製街路灯。

なんだか、お金が結構かかってそう(笑)。

阿部さん
「昔は景気がよかったんでしょうね、街路灯だけでなく歩道も一緒に工事をしました。」

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阿部さん
「ヨーロッパの石畳をイメージして、本物の天然石を使っています。」

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阿部さん
「あんたのところはいくらね、一括で払えなければ分割ね、みたいなやり取りがあったそうです。」

工事する前の道玄坂は、どんな風景だったんだろう。

渋谷の歴史の全てを学べる白根記念渋谷区郷土博物館・資料館で、昔の写真をお借りしてきた。

普段は昔の写真をweb上に掲載することは許可されていないそうだが、今回の取材の意図をご理解いただき特別に掲載することできた。

201702_dogenzaka-1(写真提供:白根記念渋谷区郷土博物館・資料館)
昭和47年の道玄坂。

日本のどこにでも見られるアーケードが連なる商店街だ。

歩道はあるものの、アスファルトむき出し、街路樹も見当たらない。

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before(昭和43年)

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after(平成29年)

派手なビルが立ち並ぶよくある東京の風景ではあるものの、街路灯やケヤキ並木が道玄坂らしさを表している。

一連の工事のお金を集めたのは道玄坂商店街振興組合

道玄坂で商売を営む人たちの団体だ。

歩道や街路灯と聞くと行政が管理するものだと考えがちだが、自分たちで声を上げ実行してしまう行動力。

自分たちが過ごす日常の場所だからこそ気持ち良い場所にしたい、渋谷に遊びに来る人にも気分良く楽しく過ごしてもらいたい、渋谷に根付いて暮しているからこそ生まれる、渋谷愛だ。

商店街振興組合が商売をしている人たちの団体なら、住んでいる人たちの団体もある。

それが町会

町会は主に渋谷金王八幡宮のお祭り、例大祭で氏子として活動する住民組織で、防犯、消防など地域の安全に関わる活動にも携わっているという。

大都会の渋谷でこうした地域の組織が今だに根付いているのが意外だと感じる方も多いのではないだろうか。

実際、道玄坂町会エリアに住んでいる人はほんの数世帯。

実態としては、昔この地域に住んでいた人々や道玄坂商店街振興組合青年会の有志がなんとか町会の伝統を引き継いでおり、そんな有志の数も年々減少傾向にあるという。

華やかな大都会渋谷であっても、伝統を継承し続けることの苦労は大きいようだ。

連日多くの人々で賑わう道玄坂商店街ではあるが、その中で振興組合に加盟しているお店は約3割ほどだという。

近年は増えた店舗の多くはコンビニやチェーンの飲食店などフランチャイズ店。

街路灯維持や歩道清掃のための町会や振興組合の費用、例大祭でお神輿を出すためにかかる費用などを地域の人々で負担するご奉納金の援助をお願いに回っても、

「個人店ではないので地域活動やお祭りとの関わりはちょっと。」

という返答が少なくない。

渋谷新聞
「例大祭ではどれくらい町会で費用がかかるんですか?」

阿部さん
「道玄坂では約300万円以上はかかります。

これからは担ぎ手ももっと少なくなるし、財源は町会費とご奉納金しかないのでどう集めるかが課題です。」

渋谷新聞
「町会費とご奉納金で賄えなくなるとどうなってしまうんでしょうか?」

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阿部さん
「お神輿が出せなくなります。

やっぱりそういうところも渋谷界隈でも実際に出てきています。

お祭りでは、お神輿だけがちょこんとあったり、人もお金も集まらないから、出しても担げないところもある。

神輿を神社に返してしまったり、他の団体に貸したりあげてしまうところもあるそうです。」

私たちが普段目にする渋谷のまち並みや文化は、渋谷に生まれた人たちや、渋谷で暮らす人たちの努力で守られている。

もしも町会や商店街振興組合が無くなってしまったら?

この先もみんなが安全に楽しく過ごせる渋谷であってもらうためには、地元住民だけでなく企業やチェーン店など、渋谷で活動をする会社や団体が町に関わっていく方法を見つけ出さなければならない。

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渋谷新聞
「お神輿の担ぎ手として、道玄坂や周辺にある企業は参加していますか?」

阿部さん
「あんまりいないかもしれないですね。

色々な会社さんが道玄坂にいてお仕事をされていますが、人としてのお付き合いはないです。

商店街振興組合青年会の会長や若手たちとよく話すのですが、

道玄坂にはサイバーエージェントさんとかユニクロさんとか優良な大きな会社さんが多い、そこで働いている若い方々に青年会と仲間になってもらって、みんなで神輿を担げたらいいね、と。

実際に少しずつですがなるべく関わってもらおう、という動きになっています。

そのために、看板や半纏に企業のロゴを出すのはどうか、伝統行事なのだからそれは良くない、などいろんな意見も出てくるでしょう。

同じお祭りを続けていくために、変わっていかなきゃいけない部分もあると思っています。

これからも10年20年先、自分の子どもたちにつないでいくために、やりやすい環境をつくってきたいと思っています。」

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今の渋谷道玄坂の風景には、約30年前の先人たちの思いが残っている。

まちの繁栄や存続のためには、経済活動だけではなく、そこを守ろうとする人々と思いの継承が必要だと感じた。

渋谷が活気に溢れ魅力的な町であり続けるために、企業や訪れる人々と、町会や振興組合との新たなつながりが必要だとも感じた。

例えば、私たちが例大祭で神輿担ぎに参加することも、渋谷を未来につなげる行為なのだ。

渋谷で働いている人はもちろん、中には渋谷が好きでお祭りに参加したいという人々に広く門扉を開いている町会もある。

例大祭は伝統行事、マナーやしきたりはきちんと守り、渋谷の粋なお神輿と町をつくるという役割を一緒に担いでくれる人々が増えてくれることを願う。

渋谷新聞では引き続き、渋谷をつくり守る町会の方々のお話をうかがっていきます。

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<取材協力>

道玄坂町会

道玄坂商店街振興組合 
http://www.shibuyadogenzaka.com/

白根記念渋谷区郷土博物館・文学館 
住所:〒150-0011 東京都渋谷区東 4-9-1
TEL:03-3486-2791
FAX:03-3486-2793
開館時間:11:00~17:00(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、年末年始
入館料:一般:100円、小中学生:50円
    団体(10人以上):一般 80円、小中学生 40円 
    60歳以上の人、障害のある人と付き添いの人は無料
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/kyodo/

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