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一晩で人生が変わってしまうかもしれない少女たちと向き合う「NPO法人BONDプロジェクト」

10代20代の生き辛さを抱える女の子たちを支援する特定非営利活動法人『BONDプロジェクト』

彼らの活動は、渋谷の街頭で気になった女の子に声をかけ、話を聴き、必要あれば支援の手を差し伸べるといった地道な活動から始まったらしい。

どんな若者に出会い、その若者たちにどのように向き合っているのだろうか?

代表の橘ジュンさんとカメラマンのKenさんに、インタビューをさせてもらった。

一晩で人生が変わってしまう若者たちがいる。

ジュンさんはこの日もインタビューの直前まで、メールと電話相談で連絡をくれた女の子に面談をするため出張していた。

その子は現在17才。

何度も離婚再婚を繰り返していた母親からは虐待を受け、虐待から逃げるため実家を出て借金をしてまで一人暮らししていた。

ジュンさんは会って面談をしたいからBONDプロジェクトの相談室へ来るよう誘ったが、所持金が20円しかないので行けないという。聞くと、食べるものも何もなく、しばらく水だけを飲んで過ごしていたそうだ。

その話を電話で聞いたジュンさんはすぐに、その子の家に一週間分の食料を段ボールに詰めて送った。

そして改めてジュンさんがその子のもとへ行き面談をした。

親が学費を払えず、社会福祉協議会や生活保護の窓口などにその子は自ら相談をしてお金を借りていた。
もうすぐ18歳になってしまうため児童福祉法で保護されなくなってしまう。

ジュンさんはすぐに、とある機関(居場所のない未成年のための相談先)に連絡し、面談と保護を依頼。
そこには弁護士がいて、親との間に立ってくれる。

未成年の場合親権問題がややこしいのだ。

ジュンさん
「多くの子は、どんなにひどい環境になっていても、なかなか自分の置かれている状況を話してはくれません。
なぜなら、そのひどい状況は自分が選択した結果だからと考えてしまっているからなんです。

虐待から逃げるために家を出ることを選んだのは自分自身、だから今の大変な状況も我慢しなければならないと思っている。

困っている「今」は色々なことの積み重なりで出来ているんですよ。
だから、それを解決していくには経験した時間の何倍もの時間が必要となります。」

KENさん
「今でもシェルターという形で出会った子達に寝る場所を提供しているのですが、夜が不安で眠れない子や、家に帰りたくない子もいるし、今日まさにリストカットしちゃいそう、今日人を殴ってしまいそう、子供に暴力をふるってしまいそうだ、というような一晩で人生が変わってしまおうとしている子もいます。

私たちはその子達に、安心して眠れる場所と、温かい食事を作ってあげることで、立ち止まって一回休んでごらん、と言っています。

一晩で変わる気持ちもあるし、もちろん何日もかかることもある。
とにかく一旦「間を空ける」ことが大切なんだと思っています。

私たちのことはたまに思い出してくれればいいし、止まり木的存在になれればいいですね。」

「話を聞いてあげる」ではなく、「話を聴かせてもらっている」という気持ち

橘ジュンさん自身も10代の頃、自分の居場所を探していた。

その当時メディアの取材を受け、ある編集者と出会う。自分の話をちゃんと聞いてくれる大人の存在を初めて知り、自身がライターを目指すきっかけともなった。

10代20代の若い人達が何を考えているのか、何を想っているのか「聴きたい」「知りたい」。

20年ほど前から2人は終電後の渋谷や新宿などの繁華街に行き、気になった子たちに声をかけ、話を聴かせてもらったり、写真を撮らせてもらったりしていた。

街に何度も足を運ぶと、色々なことが見えてくる。まるで猫のようにそれぞれのテリトリーがあり、渋谷に存在している子たちなのに、お互いは知り合いではないし、互いの領地は侵さないようなルールもあったりするそうだ。

ジュンさん
「チーマーや暴走族、外見が派手な子もいるけど、見た目は普通の子なのに学校にもどこにも居場所がない。

帰りたくない、死にたい、消えたい、透明人間になりたいと思っている子たちもいたんです。

誰にも言えないで抱えているその想いを、その子たちの「声」を伝えたい!

自分たちにもできる形は何か考え、自費出版のフリーペーパー『VOICES』を創りました。」

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ジュンさん
「今では『VOICES』は名刺代わり。こんなの作ってるんだけど話聴かせてくれない?って。

ちゃんとした理由もなく話しかけるとみんな警戒しますからね、当たり前だけど(笑)

『VOICES』をパラパラみた子が、あー気持ち分かる、同じこと考えてたなぁって言うんですよね。会ったこともない全く知らない子の「声」が、読んだ子の胸に響いて、新たな「声」につながっていく。」

 
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KENさん
出会った子のなかには望まない妊娠をしている子、お金も帰る家もなく援助交際をしている子、これからAVの面接を受けに行こうとしている子など心配で放っておけない子も多い。

そんな時はジュンと2人で相談して、自分たちの家に泊まってもらうようなこともあったね。」

ジュンさん
「当時も今もやっていることは変わらないけど、あの時は無我夢中だったよね。

自分から気になった子に声をかけて、会いたい子に自分から会いに行って、話を聴かせてもらうことができていたから。でも、本当に心配な子達を行政に繋いで支援してもらおうとしたけど、一カメラマン、一ライターでは全く相手にしてもらえなくて、話すら聞いてもらえなかった。

その時にNPO団体という社会的立場の必要性を本当に強く感じました。今では警察の人にもお疲れさまですとか言われるもんね(笑)全然対応が違う。」

その子の人生はその子の人生でしかない。こちらは選択肢と、一緒に考える時間を持つだけ。

お昼すぎの渋谷。BONDプロジェクトの街頭パトロールに同行取材させてもらった。街頭パトロールは深夜だけではなく、昼や夕方に実施することも多いそうだ。

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気になった女の子たちに声をかけていくジュンさん。

「何してるの?」「何探してるの?」「これからどこか行くの?」話しかけ方は本当にフランクだ。VOICESを手渡し、話を聴かせてもらう。

ジュンさん
「女の子が話してくれる時、どこに行くのか、誰と会うのか決まっているかどうかが重要になってきます。

イベントに行くとか友達に会うと決まっている子はいいんですが、どこかに行く予定もなく、ただあてもなく歩いている子がいたりするんです。

そういう子には頼れる人がいるのか、行くところはあるのかなど、もう少し踏み込んで話を聴くようにしています。」

 

──この日、特に支援が必要な子には出会わなかった。

 

ジュンさん
「良いことですよ。何より今日もたくさんの子に出会うことが出来て、VOICESを渡すことが出来て良かった。

今は何もなくても、もしいつか1人で問題を抱え込んでしまうような辛い状況になってしまった時、私たちのことを思い出してくれるかもしれない。

連絡先も知らないその子たちに私たちから連絡することはできないけど、VOICESには私たちBONDプロジェクトの連絡先が書いてあるから、何かあったらいつでも話を聴かせて欲しい。

困ったときに話していい、頼っていいんだ、そんな風に思ってもらえると嬉しいです。」

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BONDプロジェクトは現在メールや電話の他、常設の相談室も設けている。

そして来年の春、移動式のカフェ型相談室を開く計画を立てているそうだ。

相談室に、自ら足を運ぶことが出来ない子がたくさんいる。

相談室=その場で相談しなければならないと思ってしまい、うまく自分の話したいことを伝えられない子もいる。

自ら出会いに行かなければ出会えない子たちのもとへ行き、お茶を飲みながら自分の話したいタイミングで自分の話したい事を話せるような移動式カフェの空間を創りたいという。

そしてその子たちの声を行政に、相談窓口に繋いでいきたい。BONDプロジェクトは動く相談窓口「つなぎ人」だ。
 

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この取材を通して感銘したこと、それは「話を聞いてあげる」ではなく、「話を聴かせてもらっている」というお二人のスタンス。

苦しみ悩む人たちは若者だけでなく、大人も同じ。大人になればなった分、今置かれている辛い状況は自分のせいだと、より自分を責めてしまうことだってある。

そんな時、自ら話を聞いてもらおうときちんと相談に動ける人は少ないだろう。

また、相手が「話を聞いてあげる」といったスタンスでは、わずかな上下関係が生まれてしまい、頼り辛くなってしまう気がする。

「私はあなたの話が聞きたくて、聞かせてもらっているんだよ。」

こんな風に言ってもらえると、年齢差も立場も関係なくなる。

BONDプロジェクトの場合、若い子たちの「声」を集めて「VOICES」というフリーペーパーを作りたいから聞かせてもらっているんだよ、といったように。

「話を聞かせてもらっている」というスタンスが世の中に広がっていったらどんなにいいか。

そしてBONDプロジェクトの存在が、若い子たちの間にもっと広がっていって欲しいと心から願う。

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<取材協力>
BONDプロジェクト
http://bondproject.jp/

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